看護の知恵袋:感染対策のツボ正しく知ろう、新型コロナウイルスの病原体検査
【Vol.165新春号】2021年1月26日
新型コロナウイルス感染症の流行により、病原体を検査する『PCR法』『抗原検査』の検査名称は、誰もが知るところとなりました。今回は、その検査と検体採取時の注意点を紹介します。
【ツボ1】PCR法
検体中に存在するウイルス遺伝子(核酸)を特異的に増幅し検出する方法で、『Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)』の略です。その他の検査方法と比較すると、検出感度は高く信頼性もあるため、無症状の濃厚接触者検査にも用いられます。しかし、検体処理に技術が必要なことや、結果が出るまでに時間を要するといった特性もあります。また、死んだウイルスの残骸も検出されるため、感染症が治癒した後もしばらく『PCR陽性』として検出されることがあります。
検査機器や試薬が高価なため、以前は、大学病院や研究機関、衛生環境研究所でしか行っていませんでしたが、新型コロナの流行を機に数多くのPCR検査機器が開発されたため、一般の医療機関での導入もすすんでいます。
PCR法は、病原体検査以外にもがん検診で用いられています。
【ツボ2】抗原検査
特定のウイルスがもつ抗原(蛋白質)に特異的な反応を示す抗体を用いて検出する方法です。PCR法のように標的を増殖させることができないため、検出には多くのウイルスが必要になることから、検出感度は低くなります(無症状者への使用は推奨されていない)。しかし、 PCR法と異なり特別な機器や試薬は必要とせず、検査判定も15~30分と短いため、有症状者のスクリーニングとしては有用です。
抗原検査は、インフルエンザや溶連菌、マイコプラズマなど各種感染症検査で用いられています。
※抗原検査陰性の解釈と留意事項
-SARS-Co-2 抗原検出キットの活用に関するガイドラインより抗原検査で陰性であって、臨床経過から感染が疑われる場合、または、症状発症日および発症後10日以降の者の場合は、確定診断のため、医師の判断においてPCR検査などを行う必要がある。
各検査の精度には限界があり、検体採取時の操作や検体の性状、取り扱い時の汚染(コンタミネーション)などにより、偽陽性や偽陰性が生じる可能性もあります。検査結果の解釈時は、臨床症状や放射線画像、患者の行動歴・接触歴などから総合的に判断することが必要です。
【ツボ3】検体採取
新型コロナウイルス検査の検体は、喀痰、気道吸引液、鼻咽頭ぬぐい液、鼻腔ぬぐい液、唾液などがあります。その中でも鼻咽頭ぬぐい液は、最も標準的で信頼性が高いと考えられているため、インフルエンザ抗原検査と併せて採取することもあります。その反面、採取者が飛沫に曝露するリスクが高いため、防護用具を用いた感染対策を徹底したうえでの実施が前提となります。
鼻咽頭ぬぐい液採取時の注意点
- 検体採取方法:滅菌ぬぐい棒を、鼻腔から孔から耳孔を結ぶ線にほぼ平行に鼻底腔に沿ってゆっくり挿入し、抵抗感を感じたところで10秒程度止め、鼻汁をゆっくり浸透させ、ゆっくり回転させながら引き抜きぬぐい液を採取します。ぬぐい棒は周囲への汚染に注意しながら保管輸送容器に収納します。院内輸送時は、さらに二次容器に収納します。
- 感染対策:フェイスガード、サージカルマスク、手袋、ガウン等で防護し、換気の良い場所で実施します。患者はサージカルマスクを着用し、鼻だけを出してもらいます。
(編集:東予感染管理サークル)
東予感染管理サークル(Toyo Infection Control Circle:TICC)は、地域の保健医療福祉施設における感染管理教育の支援を目的として、東予地域に在籍する有志の感染管理認定看護師によって感染対策セミナーを中心とした活動を行っています。