看護の知恵袋:感染対策のツボ知っておきたい!ワクチンのポイント
【Vol.166春号】2021年5月14日
ワクチン接種には、個人の発症や重症化の予防、社会的流行の抑制、さらには医療機関の負担を防ぐといった効果が期待できます。新型コロナウイルスのワクチン接種がすすめられる中で、看護師として知っておきたいポイントを紹介します。(2021年2月15日時点)
【ツボ1】新型コロナウイルスワクチン
ワクチンには、弱らせた病原体や病原体を構成する物質が含まれており、体内に投与することで免疫を獲得することをねらっています。一般的には『生ワクチン(麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎、BCGなど)』や『不活化ワクチン(インフルエンザ、B型肝炎、肺炎球菌など)』)がありますが、新型コロナウイルスワクチンには、『メッセンジャーRNAワクチン、ウイルスベクターワクチン』という聞きなれないワクチンもあります。
ワクチンの効果(発症予防、持続期間)や安全性については、接種開始からあまり時間が経過していないことから、まだ明らかになっていない部分もあります。特に、小児・妊婦に関するデータは十分ではありません。
拡大が懸念される変異株に対しては、一定の効果があると考えられているとともに、大きな変異にも対応できるようワクチン開発の準備がされています。
【メッセンジャーRNAワクチン】
従来のワクチン作用とは異なり、ウイルスの設計図となる遺伝子(mRNA)の接種により体内にウイルスの一部(タンパク質)を生成し、疑似的な感染状態から抗体を作ることを目的としています。体内のmRNAはヒトのDNAには組み込まれず、時間の経過とともに分解されていきます。
【ツボ2】ワクチンの副反応
国内で接種される新型コロナウイルスワクチンには、接種部位の痛み(66~83%)、腫れ、発赤といった局所症状や、38℃以上の発熱、倦怠感、寒気などといった全身性の反応が報告されています。これは、1回目接種後より2回目接種後のほうが発現割合が高くなる傾向にあります。
fukuhannou.png重篤な副反応にはアナフィラキシー(蕁麻疹や掻痒感、粘膜の腫脹、息切れ、血圧低下、意識消失など)があります。海外の接種では、アナフィラキシーが100万回に5回程度報告されています。接種後は病院や接種会場で一定時間様子を見て、万が一アナフィラキシーが発現しても医師や看護師が必要な処置ができるよう備えておくことが必要です。米国では接種後の観察時間を、①過去に重いアレルギー反応を起こした人や、ワクチンや注射で即時型アレルギーを起こしたことがある人は少なくとも30分間、②それ以外の人は15分間、アナフィラキシーなどの有無を観察することが推奨されています。
【予防接種健康被害救済制度】
ワクチン接種により健康被害が生じ、医療機関での治療が必要になったり、障害が残ってしまった場合には、予防接種法に基づく救済(医療費、障害年金などの給付)を受けることができます。
【ツボ3】ワクチン接種の実際
新型コロナウイルスワクチンは、接種間隔を3週間あけて2回接種します。接種方法は、皮下注射と比較し局所の副反応が少なく抗体ができやすい筋肉注射で行います。注射時には、接種部位の解剖を理解し神経損傷に注意します。(QRコード:『動画でわかる!看護技術』看護roo!:筋肉注射)
ワクチン接種後、他人への感染をどの程度予防できるかは明らかになっていません。すぐに多くの方がワクチン接種を受けられるわけでもなく、ワクチン接種ができない方もいます。自身がワクチンを接種したとしても、引き続き「密集・密接・密閉」の回避、マスクの着用、手指衛生を実施してください。
(編集:東予感染管理サークル)
東予感染管理サークル(Toyo Infection Control Circle:TICC)は、地域の保健医療福祉施設における感染管理教育の支援を目的として、東予地域に在籍する有志の感染管理認定看護師によって感染対策セミナーを中心とした活動を行っています。