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感染対策のツボ:新型コロナウイルス感染症が5類感染症となる前に

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看護の知恵袋:感染対策のツボ新型コロナウイルス感染症が5類感染症となる前に

【Vol.174春号】2023年5月10日

まもなく、新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザと同等の5類感染症となりますが、今後のウイルス自体の感染力や病原性の変化は予測できません。また、薬剤耐性や他の感染症の脅威もあるため、院内感染対策をコロナ禍以前に戻してもよいということにはなりません。この3年間で身に着けた、質の高い感染対策を維持することが重要です。

【ツボ1】標準予防策に立ち返る

『標準予防策』は、感染症の有無にかかわらず、すべての人に対して行う感染対策であり、「血液、体液、汗以外の分泌物、排せつ物、創のある皮膚、粘膜には感染性がある」とみなして対応するという考え方です。特に、新型コロナウイルス感染症は、発症前から感染力があるという特性から、標準予防策の考え方は非常に重要でした。そして、病原体の感染伝播様式に応じて『経路別予防策(接触感染対策・飛沫感染対策・空気感染対策)』を追加することは、従来通りです。

【ツボ2】感染対策の定着と見直し

新型コロナウイルス感染症の出現により、医療・福祉等の従事者は、感染症の有無にかかわらず、レベルの高い標準予防策を身に着けました。5類感染症に移行する前に、このまま定着すべき項目や見直しを検討する点を紹介します。

手指衛生

コロナ禍で増加した、アルコール手指消毒剤使用量や手指衛生遵守率を維持できるよう、『手指衛生5つのタイミング:WHO』の理解と実践に務めましょう。精度の高い手指衛生は看護の質を高めます。また、頻回な手指衛生による手荒れ対策として、保湿クリームだけでなく、肌のコンディションに応じた複数種類の手指消毒剤の導入も効果的です。

手袋

「手袋を着用していれば感染対策ができている」わけではありません。着脱や手指衛生のタイミングを間違えると、手や手袋は感染源となり、環境や自分自身を汚染することになります。特に手袋を脱いだ直後の手指衛生を習慣化しましょう。

マスク

医療機関や高齢者施設等では、患者や利用者を守るために、引き続き業務中のマスク着用が必要と考えます。相互に感染しないためにも、鼻からあごまで隙間なく覆うように着用します。いまだに見かける鼻出しマスクでは、患者や同僚からは信頼を得ることはできません。また、マスク着用下でも、相手の耳元で大きな声を出すことは感染伝播になりうるため、聞こえのよくない患者には、距離を保ちわかりやすい話し方を心がけましょう。

アイウェア

コロナ禍において、常時着用していたゴーグルなどは、今後の流行状況により使用場面が見直されることが予測されますが、吸引や口腔ケアでは従来通り着用しましょう。また、マスクが着用できない呼吸器症状のある者や発熱者との接触時、咳嗽を伴う患者の食事介助時などは、たとえコロナ禍でなくも、標準予防策の視点からは着用が必要です。

N95レスピレータ

エアロゾル感染対策として頼もしい防護用具ですが、顔にフィットしていなければ十分な効果を得ることはできません。形状も様々なため、どのマスクがフィットするのか事前確認が必要です。測定器を用いたフィットテストサービスを行っているメーカーもあるため、問い合わせてみてはいかがでしょうか。

環境整備

新型コロナウイルスだけではなく、薬剤耐性菌対策も含め、病室やスタッフステーションでは高頻度接触表面を中心に1日1回以上の清掃は欠かせません。消毒液が含浸している環境清拭用ワイプが便利ですが、薬液と微生物の接触時間が消毒効果を左右します。物理的な拭き取りとともに、環境表面に薬液を塗布するイメージが大切です。

換気

エアロゾル感染の存在が明らかとなり、換気の重要性が見直されました。インフルエンザでも換気は基本対策です。今後も、正常に換気ができているか、施設として定期的なメンテナンスを計画しましょう。

3年間の感染対策と大きく変わらないように見えますが、結局は、これらがコロナ禍よりも前から行うべき標準的な対策であったということになります。要点さえ押さえておけば、不意の発生でも感染拡大のリスクを低減することができます。

【ツボ3】将来への備えと地域連携

私たちは、新型コロナウイルス感染症に対し、組織が一丸となって困難を乗り越えるという経験をしました。将来の新興感染症や再興感染症に備え、活動は記録し、定期的に組織横断的な訓練を行いましょう。また、『感染対策向上加算1』算定医療機関と連携することで、情報交換や訓練への参加、保健所とのつながり、収益増加などの利点があります。当該医療機関へご相談ください。

(編集:東予感染管理サークル)

東予感染管理サークル(Toyo Infection Control Circle:TICC)は、地域の保健医療福祉施設における感染管理教育の支援を目的として、東予地域に在籍する有志の感染管理認定看護師によって感染対策セミナーを中心とした活動を行っています。

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